DISC
Single
カな
2004.10.20 ki/oon records/ki/oon2
¥1,223(tax in.) / KSCL8891
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1.カな
2.マダム・ベル
3.カな(Instrumental)
CD-EXTRA「背中」ビデオクリップ

ポピュラーミュージックとエスニックとクラブカルチャーの全部であり、その実そのどれでもない。独自のスタンスを貫く巷で話題の『ASA-CHANG&巡礼』のフィーチャリング・シングル第二弾!




ASA-CHANG&巡礼のコラボレイト・シングル・シリーズ第二弾は『ハナレグミ』の切ない唄声が魂震わす、いわば「巡礼スタイル」フォークチューン。フォークトロニカ?いやいや全然そんなんじゃない。聴けばやっぱり『ASA-CHANG&巡礼』のポップスだね!!



「小泉今日子」とのコラボレイション『背中』に続く、「ハナレグミ」が巡礼のトラックに乗せ枯渇の思いを唄う『カな』がレーベルを「キューン2」に移籍して待望の登場です!!フォーキーな揺らぎ感とエディット、いや揺らぎをエディットすることにより、浮き沈みの人生観を演歌以外で初めて表現することに成功している音。言葉にすれば’癒し系’の次の’揺らぎ系’なのでしょうか?つまりは無理にアッパーであることが前提ではない、もっと聞き込むほどに味わい深い音楽を人が欲している現実を反映し今まで聴いたことの無いようなポップスとでも言うべきでしょう。

そしてあのハナレグミ「永積タカシ」の声。特に今作におけるパフォーマンスは和製テリー・キャリアーとも形容出来うる美しいものであります。そしてお馴染みU-ZHAANの超絶タブラと浦山秀彦しか出来ないコンピューターを駆使した神業的エディット。ASA-CHANGによる未来型琵琶法師ギター。それらの一聴相反する音要素を凝縮させ、配置させるASA-CHANGの鬼才めくプロデュース。その先鋭の時代察知感覚こそ、リリースを重ねる度に、WIRE/MUZIK/MOJO/DJ MAG誌などヨーロッパ中の辛口な音楽誌をも巻き込み高い評価を勝ち得ているのです。

同時収録されている『マダム・ベル』は、『花』など巡礼の代表曲をバックに斬新な活動を続けているダンスカンパニー「イデビアンクルー」の為、書き下ろした新曲。力強いサックスブロウが印象的な、前アルバムに収録された「海峡」のテイストにも似た、これもまた巡礼節の泣ける曲です。

さて、このシングル、何度聴いても発見のある飽きのこないシングル、変化している部分も不変の部分も巡礼マジック。現在制作中で近々皆さんの前に発表されるでありましょう、巡礼四作目のアルバムの充実した完成度を予感させてくれるものです。


楽曲解説

<「カな」について>
「背中」をマラソンに例えるなら、今作「カな」は100・走です。
また、出来るだけ難しくなく巡礼テイストを表現出来ないかと、いろいろなモノをそぎ落としました。
これも、大変なチャレンジでした。

ASA-CHANG





<ASA-CHANG インタヴュ‐>   <ハナレグミ コメント>



ASA-CHANGインタヴュ‐

「背中」から続く巡礼のフィーチャリングシングル第2弾「カな」。ゲストボーカルのハナレグミ「永積タカシ」の心震わす歌声が印象的な今作は、巡礼的フォークチューンとも呼べる新機軸!発売まで約一ヶ月と迫った9月某日、ディレクターでもあり所属事務所riverrun,の社長でもある茂木英興氏と、同じくriverrun,の吉澤進也がASA-CHANGにインタヴュー。「カな」に対する熱い想いを語っていただきました!

A:ASA-CHANG  M:茂木英興  Y:吉澤進也





Y:よろしくお願いします。
M:よろしくお願いします。
A:お願いします。

Y:いよいよフィーチャリングシングル第2弾の「カな」の発売が10/20に決定しました。前作「背中」から続くこの「カな」ですが、今作のテ?[マはどのようなものなのでしょうか。

A:永積くん(ハナレグミ)フィーチャリングが決まった時点でもうテーマは僕の中では決まっちゃってたんですけど、やっぱり出来るだけ分?ゥりやすく永積タカシくんの声を使って、出来るだけ分かりやすく人に伝わるもの、そして「巡礼であるもの」を創ろうと思いました。今まで?フ巡礼と相当音の肌触りが違うと思うんですが、それは、そういうテーマから来てると思います。

Y:今回は本当に”歌もの”という感じですよね。さっき朝倉さんも言いましたけど分かりやすいというか、触りやすいというか。そういう印?ロはすごくありますね。ちなみにフィーチャリング第1弾として小泉今日子さんとやる時からすでに次に第2弾っていう考えはあったんですか?

A:この2004年にフィーチャリングシングルを2枚出すと言うのが僕の中で計画があって、1月に小泉さんとの「背中」が出て、そして年内にも?、1枚。これで今年1年の流れにしようと。つまりLIVEが今年出来ないので、フィーチャリングシングルという今まで巡礼に無かったフォーマッ?gで、2作やってみようと思って。

Y:では2作目がハナレグミっていうのは早い時期からあったんですか?

A:実の事を言うと、ハナレグミっての方が先にあったような気がしますね。ハナレグミは引っかかってたんだよね。ずっと。永積くんの声と?「うものに対して。まあ、奇しくもその後ハナレグミのアルバムとかシングルのレコーディングとか、今年の夏フェスでずっとサポートメンバ?[でドラム叩いてるっていう形になってるんですけど、それは本当の偶然です。「カな」を創ってるときにはちょっと遠い存在だったんですけ?ヌ、創ってる間にどんどん流れ的に近付いて。「サポートしてるから」とか「ハナレグミのCDに参加したから」とか、その流れでフィーチャリ?塔Oをハナレグミに選んだと思う人が多いと思うんだけど、まるでそれは後付けで始まりは全く逆です。どっちかっていうとテレビのCMで聴こ?ヲてくる永積くんの声とか、そういうもので反応した部分が大きいですね。

Y:僕もハナレグミとても好きなんですけど、「ハナレグミ」というアーティストとしての印象はどういうものを持たれていたんですか?

A:面識あるとはいかないまでも8年ぐらい前からお互いに知っていたんです。SUPER BATER DOGの頃から。それもポイントとしてはあったんで?キけど、ホントに純粋に透き通るような声と詞と曲を書く人だなって思ってます。それがすごく直球で人に伝わっているなと。すごく美しく血?ェめぐっているというか、自分の創ったものがあまり歪まずにリスナー、ファンまで届いている、すごく良いアーティストだと思ってます。意?Oにそういうことは難しいんです。深読みが深読みを呼んで違う方向に聴いてしまったり・・・。まあそれはそれでありなんだけど、永積くん?フ場合はすごく美しく、淀み無く流れているなと感じます。まあ巡礼なんかだとその真逆のようなもので、深読みが深読みを呼んで・・”泣け?驕hとか”心にしみる”とか言われたり、おっかなくて聴けないとか言われたりそういう意味ではリスナーまでいい流れをしているなぁ、と思?「ましたね。

M:僕は「背中」の時ぐらいから朝倉さんは、もちろんミュージシャン、アーティストなんだけど、むしろ限りなくデザイナーに近い人だなっ?ト思ってるんです。音についてもそうだし、例えば小泉さんと組んだ次に、ハナレグミと組むていうのも、朝倉さんのデザインって感じがする?B組む相手によって巡礼というものがどう映るかっていうのは変わってくるし、それが絵として綺麗か綺麗じゃないか、みたいなね。そう見る?ニやっぱ「今回ハナレグミで行きたいんだけど」って言われた時に、やっぱり朝倉さんは優秀なデザイナーだなと思いました。遠くて近い存在?ニ組んでいく感じとか、組んだ相手の状況とか、アーティストの活動としての形とかを見てると、今回もなんかすごい綺麗なデザインだなと思?「ました。で、この「カな」っていう曲が(朝倉さんの頭の中で)出来たって時に、「茂木君ゴメン、次のシングル、2分ぐらいの曲なんだけどいいかな?」って電話をもらったんですよ。それもなんかデザインとしてカッコイイなと思って。「もう1分でも2分でもいいです」って答えました。

A:実際は3分以上あるんですけどね。聴くと短く聴こえると思うんですけど。

M:初めて「カな」聴いた印象は”居合い斬り”みたいに見えたっていうか。格闘技で、普通はリングの上で3分間勝負するような感じだとすると、今回のはずーーっと構えてて、で、一瞬で居合い斬りして、刀をカチャッて入れる座頭市みたいな印象。そういう曲の形に仕上がっていてすごくカッコイイと思った。それはサビのところに凝縮されてて、そこで完全に巡礼になる、みたいなね。それとデザインの話で言うと、永積さんの声と、タブラと、アコギ、あとハーモニカっていうデザインがスゲー綺麗だなって思った。こんなに音像としてかっこいいバランスっていうのは、ありそうで無いと思うんですよ。実にやっぱり優秀なデザイナーだなって。

A:今の話を受けて自分で思っている事は、今回はあまりエレクトロニカ的な音を使ってないんです(まあ全く使ってない訳では無いんですけ?ヌ)。そういう音、例えばピコピコいったり、ちょっとノイズっぽい音を出したりとか、っていう事をしないと、なんでみんなかっこ良く聴こ?ヲないのかな、と。そういう音をもう使うのをやめようと。それはデザインとして永積くんの声と合わないとオレが判断したりとか、歌詞の内?eとかいろいろな理由はあるんですが・・・。巡礼で取り上げられにくいのは歌詞なんですよね。実は。「花」からそうですけど、歌詞が聞き?謔閧クらい部分もあるから歌詞に注目されないのかも知れませんけど、やっぱり「背中」あたりから歌詞をあえて聞き取りやすくしてるつもり?ネんです。もっと歌詞を聴いてもらいたいなと思って。でもだからといって今回は歌詞を難しくした訳ではなくて、逆に簡単にしたというか、? まりいっぱい形容しない、物事を言い当てないんだけど、スッと言いきっちゃうというか。「背中」の時はやはり小泉さんのジェネレーショ?唐ニいうか、大人の言葉遣い、大人の歌詞にしたと自分では思っているんだけど、今回はもちろんハナレグミのファンの方にも聴いて欲しいし?Aなんていうんだろう・・・20代のまだ自分の思ってる目標に辿り着けてるような辿り着けないような、辿り着こうとしてるその気持ちみたい?ネ。やっぱり悩むじゃないですか、20代って。自分の将来についてっていうか。

M:その葛藤とかも巡礼らしいリズムのつまづきで表現されてますよね。

A:あー、そう思ってくれるとすごくありがたくて、あそここそ巡礼節なんです。「叶え、叶う」っていう簡単な二つの言葉の反復をまたリズ??的にいじってみると、人のつまずいたり前に進んだりっていう感じが表現できていいなと考えていたんです。だからこれはすごく前向きな歌?ナすね。将来についての葛藤とか、届かぬものなのか届くものなのか分からぬまま、一生懸命生きてる若い時代っていうのを、短く言い当てら?黷黷ホなと思ったんですよね。出来るだけ分かりやすくっていうのを、すごく意識しました。


M:では別な質問なんですけど、朝倉さんが僕に「次の曲出来ちゃったんだけど」っていう時って、曲が出来た時なんですか?それとも詞が出??ス時なんですか?どのタイミングで「出来た!」ってなるんですか?

A:多分両方が出来た時ですね。でもまだ音像化されてない、いわゆるオレの設計図が出来た時に出来たって言いますね。

M:結構知らない人もいると思うんですけど、朝倉さんはコンピューターで音楽とか全然創れないじゃないですか。こういう曲がどこまで、ど?、やって自分の頭の中で具現化されて全体的な事が決まっていくのかっていうのが、すごい知りたいんですよ。例えば鍵盤に向かっている訳で?ヘないだろうし、ギターを持っている訳ではないだろうし。全体がボヤーっと出来てその内に言葉が出て来て、なんとなく頭の中でメロディと?潟Yムが形作られちゃうんですか?どうして生まれるのかが知りたいなぁと。

A:基本的にまず言っておきたいのは、僕はシンガーソングライター的なタイプのミュージシャンではないという事ですね。設計図が出来た、?「や、設計図を書いてる段階ではほぼ全部の音が頭の中で鳴ってますね。

M:もう譜面化出来るぐらいに。

A:はい。ただ僕はコードネームすら知らないし、コンピュータの前でマウスすら動かせませんから。尚且つ一作目(タブラマグマボンゴ)ま?ナ叩いていたタブラすらもはや叩いてない。でもずーっと変わらないのは、僕にとって試しの音なんていうのは一個も無いんですね、本当に。?謔ュ(人の)レコーディングであるんですけど、「じゃ、試しでこっちの音も入れてみましょう」とか「試しで違う方法もやってください」と?ゥ。一切巡礼の音を創っていく過程には無いんですね。曖昧な物は一つも無いです。これはあくまで巡礼の場合ですが。巡礼のような音楽を創?チているのにリーダーに曖昧さなんていうものがあったら、メンバーは何をやっていいか分からないですよ。確固たる「こうなんだよ」ってい?、ものを提示してあげないとメンバーは困ると思います。「こういう事をしたいからこうしてくれ」っていうアイディアでは無くそれよりもっ?ニ進んだもの、設計図が無いと成り立たないユニットだと思います。

M:そういう意味では日本の中ではものすごく特殊な存在感、特殊っていうかそういう風に音楽創ってる人っていないと言ってもいいかなと思?チています。やっぱりみんなギターを持ったりとか、鼻唄を唄いながらとか、打ち込みをしながらとか、カット&トライで曲が出来ていくこと?ェ大半ですよね。僕も仕事で少し曲を書いたりするから、そういうことがすごく気になってしまうんです。話し変わるんですけど、今回なんで?ゥ分でギターを弾いてみようと思ったんですか?浦山さんというギタリストがいながら。

A:それももう完全に設計図を書いている段階で、これは浦山さんのギターでは無いな、オレだなって。ギターを弾けないオレが、「オレが弾?ュ」って譜面に書いちゃったぐらい、オレだったんですね。なんかもうほとんどギターに聴こえないような、弦を引っ掻いてるような音すら入?チてるんだけど(笑)。弾けないものを弾くっていう事で生じる生々しさがなんかあるんですよね。巡礼ってものすごく完璧な部分と、その真?tの幼稚を通り越したみたいな部分が共存している時があるんですよ。それとこれは強調したいんだけど、この曲ただの三拍子なんですよ。イ?塔Xトを聴いてみてもらえば分かると思うんですけど。ま、そういうリズムストラクチャーの面白さっていうのは、よく巡礼節って言われます?ッど、そこをもっともミニマルな形で出してると思ってます。 まあそれにしても一年間でシングルといえども2作発表するというのは巡礼にと?チてもトライだったし、U-ZHAANがインドに行ってていない中、わざわざ帰って来て録音してっていう状態での2004年だったので、キューンへ移籍して作品が出る事になったのは、すごく僕にとっては充実感でいっぱいなんですよね。

M:キューンの意味は大きいですよね。

Y:キューンの意味が大きいっていうのは具体的にいうと?

M:一度仕事してみたかったなっていうレーベルだったんだよね。やっぱり僕ら(事務所とアーティスト)は自分達だけでレコードを発表する?チてことはなかなか出来なくて、いつもパートナーを探しながら仕事していくわけじゃん。今のところリバーランは。その中で一度パートナー?ニしてやってみたかった人がキューンソニーっていう会社にいたのね。だから実現出来た事は自分でもすごく嬉しくて、楽しみだなって。これ?ヘ僕のデザインですけど、キューンソニーと巡礼ってすごくいいな、と思ったんですね。

Y:今こうして「カな」の発売が決まってお話しを聞いてきましたが、早速ですが次作の構想はもうあるんでしょうか?

A:次作は、フィーチャリング第3弾っていうのは無いです。次はアルバムですね。こうシングルシングルと来たので、それをコンパイルしたアルバムっていう当たり前の事をやりたいと思ってます。

M:でもこれが結構当たり前じゃないんですよ、蓋を開けると(笑)。

Y:これを読んだ方になんか次作のヒントというか、ニュアンス的なものをチラッと教えてもらえませんか。

M:僕はね、音は聴いてないけど話しで構想は聞いてるんですけど、限りなく巡礼のベストアルバムに近いものになると思ってる。(これまで?フアルバムの中で)オレの予想では一番カラフルだと思うし、通過点ではなく、やや集大成だと思う。もちろん完全なベスト盤ってわけじゃな?「んだけど。トピックが多いし、派手に行きたい。構想聞いてるだけだけどね(笑)。

A:どうなんでしょうね。自分の中ではもう構想は大体出来上がってて、レコジャケまで大体頭の中にはある、タイトルもほぼ決まってる。

Y:デザイン的な部分ではほぼ出来上がってるという事ですね。

A:ほぼ出来てますね。あとは音像化する、今してる状態ですね。今着々と進んでます。コンパイル盤なんで「背中」と「カな」は入ります。?サの間に入る曲達は果たしてどういうものかっていうね、そこが面白みだと思うけど。でもね、シングルだから買わないでアルバムまで待とう?ネんていう、今までの常套手段は通用しないので、シングルは買ってくれないと困ります(笑)。実際シングルとアルバムに入るものは違うも?フになりますからね。

M:極端にいうとシングル買ってないとアルバム楽しめないってところもあると思う。まあ、よりお金を使って楽しむんだったら、シングル聴?「といた方がいいとオレも思う。やっぱりシングルを買ってアルバムへ向かって行くみたいな事が出来る幸せっていうのは、同時代で生きてる?Aーティストとしか出来ないんですよ。まあ押しつけがましいけどオレは幸せなことだと思う。そういう意味では巡礼は常に発明を見せてくれ?驕A音楽の発明とか音のデザインの発明を見せてくれるアーティストだから、そこは、どこかポイントだけつまんで楽しむっていうんじゃもったいんじゃないかなって思っています。

Y:では、最後に朝倉さんからこれを読んでいる方へ一言お願いします。

A:自分達巡礼の中でもこの「カな」という曲は新機軸だと思ってるので、是非買って聴いてください。もうそれだけです(笑)。



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ハナレグミからのコメント
ハナレグミ(永積タカシ)さんから「カな」のコメントをいただいちゃいました!



まさか自分がASA-CHANG&巡礼で歌えるなんて思ってもみなかったのでうれしかった。荒ぶるフォークギターとタブラと歌声の中に戦のあとのひっそりとした霧の荒野が見えて来ました。風の音に乗ってどこからともなく「カなェ〜かナう〜」と聴こえてくる、これは日本のブルースです。
ハナレグミ(永積タカシ)
背中 ASA-CHANG&巡礼 feat.小泉今日子
2004.1.28 夢音(MU-ON)〜ex Hot-Cha
¥1,223(Tax in) IDCV-1003
購入はこちら
1.背中
2.Parlor
3.背中(Instrumental)
CD-EXTRA「つぎねぷと言ってみた」PV
超ロングセラーの大名曲「花」を生み出した巡礼に、何と小泉今日子がドッキング!?
スペシャルなコラボレイションに業界騒然、スペシャルなMIXにコアなファンもドッキリ! 「つぎねぷと言ってみた」のPV画像も収録、お得盤!!

今なお、ロングセールスを続ける「花」「つぎねぷ」という二作品をリリース後、国内はもとより英国WIRE誌にて2003年ベストアルバムに選出されるなど、その作品は各方面で高い評価を得ている他、今年で四年連続となる恒例のFUJI ROCK FESTIBALに出演、その神出鬼没な活動スタイルも見事一部お茶の間に浸透している感もある(マジ!?)ASA-CHANG&巡礼の新作が届きました。今回はなんとvoに小泉今日子を迎え、ズバリ巡礼節とも言える切なくも可愛いラブソングが誕生!花を想起させるストリングスの流暢な調べ+タブラのユニゾンに、誰が聴いても(アノ!)KYON2だと分かる元祖CUTIEボイスがフィーチャリング。巡礼ワールドにどっぷりなポスト・エレクトロニカ/ユースな年代から、巡礼を知らないが小泉今日子は大好きだという少しばかりCDショップに足が遠のいている方まで、確実に満足させること請け合いの逸品です!


comment from サラーム海上
ASA-CHANG&巡礼の新曲はなんとKYON2をヴォーカリストにフィーチャー!KYON2のあの声がタブラとシンクロしながら淡く切ないメロディーを歌う。ASA-CHANGの突き詰めた遊び心に負けないKYON2の存在、どこか歌謡曲黄金時代のかすかな残り香がして、口ずさみたくなるメロディー......名曲『花』、『つぎねぷ』を発展させた「巡礼流純文学J-ポップ」ここに完成!



楽曲解説
<歌詞の持っている「しりとり感」>

ASA-CHANG

「せ・な・か」の”か”から次の言葉を心の中で(それぞれの気持ちの中で)探し、選んでいるような情景を表現したかった。それと巡礼が行っているリズム分割感と共有したものである。
「てのひら」は”その人”自身の両手のてのひらではなく、他者。強いて言えば、愛する人のてのひら。
こんな、しりとり詩は昨今の歌詞には見当たらないが、それを実験、試みでなく、完成した表現として成り立たせたつもりです。






<ASA-CHANG2万字インタヴュ−>  <ASA-CHANGアンケート>



ASA-CHANGインタヴュ−



日本のみならずヨーロッパなどからも絶大な評価を得ている「花」「つぎねぷ」に続く巡礼の最新作、「背中」。 ASA-CHANG&巡礼会心のラブ・バラードである今作に迎えたゲストは、なんとあの小泉今日子!! この衝撃のコラボレーションが実現した経緯や制作秘話を聞き出すべく、ディレクターでもあり所属事務所riverrun,の社長でもある茂木英興氏と、同じくriverrun,の吉澤進也が、ASA-CHANGにインタヴュー。ここでしか聞けない裏話や、「背中」に対する熱い想いを語っていただきました!

A:ASA-CHANG  M:茂木英興  Y:吉澤進也

Y:よろしくお願いします。
M:よろしくお願いします。
A:はい。よろしく。

Y:早速質問ですが、2004年1月リリースのシングル「背中」なんですけども、その「背中」というタイトルの由来というか、モデルとなる人や出来事などはあったんでしょうか?

A:タイトルの由来はですね・・・うーん、曲のコンセプトとかもだけどそんなに意味性は無く、ぱっと浮かんだからとしか言えないかなぁ。それはオレに限らずどのミュージシャンでもそういうところがあると思うんですけど。うん、それはすごく難しい質問だね。

M:でも「花」も「つぎねぷと言ってみた」もきっかけとなるモチーフがありましたよね?今回もそういうモチーフがあったのかなとか、そういったきっかけって結構みんな知りたがるんですよね。僕らも知りたいし。

A:そうね、以外と知りたがるよね。例えばFOEの曲でもいいしブッチャーズの曲でもいいけど、タイトルの事ってすごく捉えにくいじゃない。抽象的であり過ぎたりとかピンときたって答えしか出来なかったり。じゃあ例えば「花」って曲はなんで「花」になったのかと言えば、まあいろんな事が偶然にあったんだけど、もともと「花」っていうのは頭で思ってて、たまたま松本大洋の漫画読んでたら「花」ってタイトルで「あ、またここで花が来たか!」って思ったりして。

M:あの漫画は後押しだったんですね。
A:そうですね。完全後押しで。やっぱ重なる時には重なるなぁと。今回に関しては、うーん、イデビアン・クルーっていうのはあるかも知れない。イデビアンの誰の背中っていう訳じゃなく、身体の、カラダの中の背中って微妙な部分っていうか。

M:自分で直視できない場所ですもんね。

A:なのにものすごく人の心をあらわしてる部位だったりする、っていうのがあるなぁ。それとか歌詞の中ですごく身体部分を使ってるなって自分では思っていて、 それも後から気付いたんですけど。まあ背中と手のひらぐらいかもしれないけど。ちょっとそういう動きからの発想とあとは・・どっちかっていうとバラードを作りたかったんですよ。まあ簡単にいえばその究極形が演歌だと思うんですけど。「背中」ってすごく、バラードとしてあらわしやすい言葉だなと思って。いっぱいこれまでいろんな曲のタイトルに使われてきたと思うんですよ。「花」だってそうですよね。ちょっと前まで言われてたもん。「花ね。あー喜納昌吉のカバーしてんでしょ」って言われてたぐらいだから(苦笑)。でもそういう普遍的なタイトルをつけるっていうのがオレは好きなんですね。


Y:この曲の制作期間はどのぐらいだったんでしょうか。構想を含め。

A:構想からだと、ものすごい長いんですよね、巡礼の場合は。まずオレが作詞作曲して譜面に起こして、それを浦山さん家に持っていってコンピューターに入れて、タブラを録って、その間に声を小泉さんからいただいて、それをエディットする訳ですよ。コンピューターの中で。で、それから打ち込みを入れたりなんだかんだしてたら・・1年弱じゃないかなぁ。声を録ったのが7月頃だけど、そのもっともっと前から断片はあったから。もちろん浦山さんと、U-Zhaanの作曲した部分もあるし・・・。

Y:今話にもでましたが、今作の最大の目玉といえる小泉今日子さんをフィーチャリングに迎えたといういきさつ、理由などを教えてください。

A:これはぶっちゃけ言っちゃいますけど、レコード会社の方からASA-CHANG&巡礼フィーチャリング誰々っていうのをやってみないかっていう話があって、最初は「うわっ」と思ったんですよ。オレの中ではフィーチャリング何とかっていうのはあんまり印象良くなくて。でもそれをヤダって言っちゃうのもヤダなって(笑)。だったらそれを前向きに、ヤダって言わないような形で消化して作品化する方がいいなって。NOっていうのはすごく簡単だけど、NOって言いたくない自分があって。で、ずーっと考えてたら、昔ものすごく近いところにいた小泉さんっていうのが、今の巡礼にぴったりなんじゃないかって。勝手にね。今作は、今までの「花」とか「つぎねぷ」とかを聞いていない人にも聞かせたい、聞いてもらいたいから作ってる部分もあって、小泉さんっていうのを、思い付いた時には、もう代わりがない、これしかないって思った。でイチも二も無く小泉さんに電話する訳ですよ。まず久しぶりって感じで電話して。んで、まず「『巡礼』って知ってる?」って聞くと、「知ってる」って。「『花』って知ってる?」って聞くと「知ってる知ってる」ってなって。「あのさー、あーいう風に声切っちゃうんだけどさぁ、声で参加してくれないかなぁ?」って言ったら、「いいよ、やる!やるやる!!」これだけ(笑)。「いいよ、やる!」この二言。うまくいく時はそういくんですよ。うまくいかない時は何じゃらかんじゃら・・あったりするけど。うまくいく時は「いいよ、やる。」これだけですよ。で、それから動いて声のサンプルをもらうまでは、そう時間は要さなかったと思いますよ。

M:まあ以外と今、巡礼ファンの若い人たちって、朝倉さんと小泉さんの関係って何なんだろうって思ってる人もいると思うんで、かいつまんで知り合ったきっかけなど教えていただきたいなと思うんですが。

A:オレとしてはそのわからなさっていうのもおもしろいと思うんだけどね。じゃあなんでここでフィーチャリング小泉今日子なんだって事を言うと、あまりにも昔なんで1、2年の誤差は勘弁して欲しいんだけど、多分オレが23か24の時にヘアメイクの渡辺サブロオさんっていう方のアシスタントを2年間ぐらいやってて、当時そのサブロオさんが小泉さんのヘアメイクを担当なさっていて、その後 自分で独り立ちするようになってから、なぜか小泉さんのヘアメイクを数多くやらせてもらって。まあ仕事の上でも、みんなでガヤガヤ遊んだりする時でも、世代的に面白い時期があって。当時まだここまで日本のヒップホップやR&Bなんて言葉もなかったし、スチャダラパーや藤原ヒロシやオレやなんじゃらかんじゃらがごちゃごちゃになってて、小泉さんっていうのはその中の何ていうか・・アイドルなのにこんな事やっちゃうの?っていうタイプのスーパーな人だった。日本の中でサブカルチャーっていう言葉が生まれた時期だったように思うなぁ。「裏小泉」なんて本もあったりね。

M:その後、朝倉さんはスカパラを始めるんですよね?

A:そうですね。スカパラで一緒にやったりした時期もあったりして、一緒に「夜のヒットスタジオ」に出たりとか。そういう時期がありまして、そっから先はすごい10年ぐらい、10年以上か?分断されてるんですけど。

Y:知り合った時期っていうのはだいぶ前からだと。

A:うん。そういう時期に会った人達って、5年ぶり10年ぶりにあったりしても距離感が戻りやすいっていうか、空いてた時間がもどりやすいから。だから 「いいよ。」って事になるんだと思うんだけど。その間に「花」とかも聞いててくれて。オレ全然CD渡したりしたわけじゃないんだけど(笑)。

Y:茂木さんは小泉さんという案を聞いた時にどう思いました?

M:その発想、デザイン、さすが、朝倉さんって感じ。それがあったかぁって。朝倉さんってアイデアを持ってくるタイミング早いし、一瞬追い付けない時とかあるんだけど、この発想には鈍臭いオレでも瞬間的についていけた。オレは小泉さんの大ファンだったし、うわ、繋がったって思った。オレにとっては、朝倉さんもそういう立場の人だったのね。オレは昔スカパラをステージの下からうわーと思って見てた人だから、そういう人達と仕事が繋がっていくっていうのはオレにとってもやりがいがある。(小泉さんは大きな存在なので)ハードルは高いけどやってみたいと思った。

A:そうそう、ハードルはオレも高いと思った。でも決してスタッフにはあきらめてほしくないなって思ったのね。例えば「つぎねぷ」とかでクラムボンの原田郁子をゲストに迎えたことがあるけど、意味合いが今回ちょっと違うし。ゲストという事以上にもっとショックのあるコラボ感を出したかった。原田郁子と巡礼はとてもなじみが良かったからね。

Y:メンバーの反応はどうでした?

A:メンバーはもう・・オーー!!って感じ。それだけで多分今作の意味合いがわかってくれたと思う。しかもシングルですよって事で。アルバムの中の一曲じゃなくね。で、メンバーにも「誰がいいかなぁ」なんて相談したりもしてたけど、結局オレがひらめいちゃった小泉さんで、もうイチもニもなく。

Y:小泉さんが浮かんだタイミングは、曲制作の中でどの辺なんですか?例えば小泉さんと決まって、曲や詩を書いたのか。またはその逆か。

A:うーん・・すごく曖昧ですね、その辺のスタートポイントは。多分タイトルだけは先にあったような気がするなぁ。オレ、意外にタイトルから始まる人で。全部とはいわないけど、まあタイトル決めた方が曲も書きやすい、コンセプトも決めやすいし。

Y:実際に小泉さんのレコーディングをした際に、やはり思惑通りというか、これだ!っていうのはありました?

A:声のレコーディングに関して言えば、巡礼の場合の歌とかヴォーカル録りっていうのは、声をもらった時点でOKなんですよね。後からの処理をものすごくするので。例えば、山下清でいうといろがみをもらったぐらいの感じ。小泉今日子さんっていういろがみをもらえればいいっていう感じ。だからあまりレコーディングの現場に関しては、あまりこれといった話題は無かったと思う。

Y:そこから絵に仕上げていくわけですね。

A:そうそう。そこから絵に仕上げる作業があるんだなって事を小泉さんも知ってるから、そんなに苦労はなかったな。レコーディングに関しては。そこが小泉さんのカンのすごいとこ。

M:あとはオレら(制作側)が小泉さんに失礼の無いようにってことだけ必死になってた(笑)。

Y:はい(笑)。

A:オレ、小泉今日子感ってのはすごい各世代的に色々あると思うんだよね。男女でも違うし。

M:うん。それはすごいある人だと思いますよ。今の日本のメディアの中で特殊な人だと思います。

A:なんで近くにいてこんなに悩み抜いて考えてたどり着いたんだろうって思って。オレからみれば勝手に同志感みたいなのもあるし、オレが若い時にすごく近かったから。まあ、アイドルとヘアメイクっていったら、関係性でいえばヘアメイクは裏方とはいえやっぱり肌を触ったり髪を触ったりするわけでしょ。それでオレはその後 スカパラになっちゃったけど、そこでまた一緒にやったり。ちょっとあまり前例のない関わり方をしてる人だから。で、ここでまたフィーチャリング小泉今日子ってことが出来るってことが相当な意味合いがある。あの、何だろう、いわゆるアイドルとして、昔の記憶としてある世代の人と、サブカル的な時に面白いと思った人と、今コマーシャルとか、資生堂のさびない、ひとっていうキャッチコピーみたいな小泉さんを見ている人とか、色んな世代間の見え方があると思うんで。その中でも突出した、ONE AND ONLYでスーパーだよ。

M:あの人ってもはや攻めるポイントがないじゃないですか。ここがださいよね、とか、これはひどかったよね、とかそういう歴史が無いままここまで来てる。それって本当にすごい事だと思いますね。。

A:だからこそ小泉さんの方も、巡礼の曲に参加しても何も問題ないというか。むしろ小泉さんの新曲と聞こえてもいいぐらい。オレはそこまで思った。小泉さんは今アルバム出してるのも知ってるし、音楽活動してるのも知ってるし。変な言い方をしたらファンを通り越したファンなのかもしれないね。尊敬しちゃってる部分っていうのは相当ある。

M:もうレコーディングの現場で見てて、やっぱり強い人だなーって思いましたね。多分『強い』っていわれるのは、女性にとってあんまり嬉しくない事だと思うんだけど、でもやっぱり・・ほらよくさ、オーラがあるっていい方をするけど、そんな簡単な感じじゃなかったですね。


A:うん、そんな感じじゃないね。スタジオのドア開けた瞬間からそれはあったね。オレも久しぶりだったからさ、なんか勝新的な感覚があったね(笑)。

M:そうそう。オレもそのぐらいに思いました。

A:貫禄というか。いや、ふてぶてしいとかそういう意味じゃなくね。

M:うん。全然そういう風じゃない。まあこれも小泉さんが聞いたらいやかもしれないけど、なんか男同士でもあるじゃないですか、会った瞬間こいつ喧嘩強そう、とか。そういう感じに近いものを感じました。

A:オレは巡礼レディースジャージがぴったりだったのはびっくりした。皆さん、小泉さんは巡礼レディースジャージ着てますよ(笑)。そのレコーディングの後何年かぶりに飲みに行ったけどね。

M:そういう時、どういうお店に行くんですか?

A:その時行ったのはオレの行きつけの居酒屋に(笑)。いいとこがあるからって。

Y:確かちょうどその時、朝倉さんの誕生日の前日だったんですよね。

A:うん。ちょうど飲みながら日付けが変わって誕生日になって。そのまま誕生日祝いが始まったけどね。

M:そういうのも、いろいろなタイミングを感じますよね。

A:そういやオレが(ヘアメイクで)フリーランスで最初に仕事を任されたのが、いきなり小泉さんの主演の「怪盗ルビイ」っていう和田誠監督の 映画の仕事がきて。それまでファッションの方でやってたのが、いきなり映画という全くわからない世界にいくことになって。いきなり主演女優のメイクをまかされて、一ヶ月ぐらい炎天下の中でロケをしてたのを思い出しましたけどねぇ。メイク室で、オレ倒れちゃった覚えがあるよ(笑)。疲れ切って。

Y:最初の仕事が小泉さんだったんですね。

A:そう。まあラッキーといえばラッキーだったね。まあそこまでの布石っていうのはあるんだけど

Y:では「背中」の話に戻りまして、巡礼の機関誌こと「巡礼通信」での茂木さんの記事内に、「すわ解散か?」という言葉が出てきたところからも、大変さは想像されるんですが、実際制作過程での苦労話などありますか?

A:えーと、制作するにあたっては、「花」や「つぎねぷ」とまるで変わらないですけど、ただやっぱりオレ達にとってもフィーチャリング誰々ってのは初めてだったもんで。やっぱりゲストフィーチャーされないと成り立たないユニットではあるんだよね。巡礼って。

M:マッシブ・アタックのような?

A:うん。もちろん自分達でラッパ吹いたりして作ってるものもあるけど、表題曲とかはゲストがいて、っていうやり方でやってきたんで、制作にあたってなんだかんだってのは別に無かったんだけど・・ただこの 作品が“キモ”だなっていうのは、茂木君もオレも他のメンバー2人も、それぞれにあったから。それぞれに追求したからそれをまとめるのが大変だった。それだけですね。でも解散の「か」の字も無いよ!

M: ASA-CHANG&巡礼は前例のない音楽を作ってるじゃないですか。既存のフォーマットがあって、それに対して、僕らはこれぐらい個性がありますって音楽ではない。それに今回は、小泉さんっていう大きなファクターが加わった。それは大変なはずですよ。小泉さんの歌があって、ストリングスがあって、タブラがあって、ギターがあって、電子音もあって、なんて音楽、他にどこにあるのよ?っていう。たぶんオレらはレコーディングのタイミングがここで終わりだから、終わりにしてるだけで。どこまででももっといいもの、もっといいものってやろうと思えば、いくらでもいける。だから完成した「背中」は、時間軸を用意して決着してるっていうだけの話なんですよね。

A:ケンケンガクガクになっていいと思うんだよね。

M:無い方がおかしいってゆうか。朝倉さんもよく言いますけど、巡礼っていうのはメンバー三人の年の差が10歳ぐらいずつ違うような特殊なユニットで、その強者三人が今回のシングル一曲に向けてエネルギーを集中してるわけじゃないですか。オレはすごくいいぶつかりだと思って見てましたよ。こりゃ面白いと思って。このぶつかりが悪い結果を生むわけが無いと思って。

A:巡礼にはやっぱり、自分で言うのもなんだけど、誇りを持ってるし、全然どこにもない聞いた事もないものを創ってると思う。巡礼っぽいから「つぎねぷ」と「花」が似てるっていわれても当たり前でしょ。「つぎねぷ」と「花」と「2月」が似てるって言われても、じゃあ他のアーティストで何か似てるのありますかっていう。そんなばかみたいな事を言われてしまうぐらい・・・。

Y:今回のレコーディングの中で茂木さんは、スタジオでも過程を全く聞かないようにしてたじゃないですか。

M:(笑)。ディレクター、過程を聞かない宣言ね。

A:あれはビビったね(笑)。

Y:僕はおもしろいなって思ってたんですけど。実際はどんな風に考えられてたんですか?

M:それに関してはいろいろ考えがあるんだけど、まあ今回のレコーディングに関しては歌録りを見てるじゃない。完成形じゃない歌録りの段階ね。今回は小泉さんの歌いやすいような状態のアレンジをまず一回作って歌ってもらった。そこでの仮歌聞いた時に、なんとなくもういいかなーって思ったのよ(笑)。あとは完成形で驚かせて!!って感じ。その時点で、オレはもうこの作品がオレのイメージより悪くなるわけないって思ったから。それは何でかっていうと、オレはある程度、朝倉さんと小泉さんの関係性を知ってたから、小泉さんに対して朝倉さんがクオリティの低い作品作るわけないって思って。ほっといても、絶体に勝負してくると思ったわけ。あとは3人にまかせておけばいいし、オレはゴール地点を楽しむ事に集中したいっていうね。まあ確かにビビったって言う意味では「最高にしろ!」っていうプレッシャーを与えたのかもしれない(笑)。

A:ビビったよ。「オレはもう絶対OKが出たものしか聞かない!」って言われて。それはもうはっきりいってものすごい巡礼に対する挑戦だよね。「背中」ってタイトルも出して、フィーチャリング誰々って、ここまで言っといて創ってるわけだから。作業も浦山さん家で普通にやるって言ったけど、まあ小泉さんとやるからってコンピューターが急に特別なものになる訳はなくて、淡々と、しかも確実にエディットは進んで行くんだけど、やっぱりその中にもオレだけじゃない浦山さんにも、U-Zhaanにもそれなりの気持ちはあったし。一音目から小泉さんってわかっちゃうぐらいすごい存在感だったからね。これを絶対出したいって思ってたし。

M:でも基本的に巡礼作品の作り方、制作過程っていうのは現場(スタジオ)で起きるものとは違って、やっぱりものすごく緻密な設計図と、それに必要な部品を作っていく作業をびっちりやって、スタジオではそれを組み立てるだけというか。だから現場のディレクションがどーのこーのって話はあんまり関係ないんだよ。だから「つぎねぷ」にしろ「花」にしろ、オレはプリプロしてる所を見に行った事は無いし。基本的にはスタジオで組み立ててる過程を見て、「あ、こういう作品なんだ」ってわかっていくっていう事が多かったんだけど、今回はそれすらいらないって思った。それすら聞きたくないって。

Y:頑なでしたよね。確かに。

A:その頑なさがさぁ、すごい伝わってきちゃって(笑)。ブルッたといっちゃブルッたねぇ。

M:こんなこと言っては巡礼に大変失礼なんだけど、仕事半分、自分の喜び半分なんですね。完全に最初のリスナーになりたい!!っていう。最初にこの曲を聞けるっていう役得を得たいだけだったんです。世界で初めての音楽を一番最初に聞けるわけじゃないですか。こんな幸せな事ないですよ。

A:小泉さんの意志とはちょっと違うかも知れないんだけど、いつでもどこかにおもしろい部分っていうか、普通の女優じゃない、普通のアイドルじゃないってところがあっていいなっと思って。オレの勝手なんだけど。今の小泉さんがどう思ってるかは知らない。そういう話はしないしね。酒の席でも。

M:どんな話するんですか?酒飲んだ時って。普通のファンの質問ですけど(笑)。

A:どんな話したっけなぁ。忘れちゃった、飲み過ぎて(笑)。ただ覚えてるのは、ずーっと小泉さんが巡礼ジャージ着てたこと。きったねえ飲み屋の座敷で。この人巡礼ジャージ似合うなぁって(笑)。小泉さんの為に作ったサイズじゃないのかなってぐらい。で、別に二人で飲んでた訳じゃないんですけど。そこに小暮徹さんという昔お世話になった写真家のご夫婦と一緒になってワイワイやってたんですけど。なんか昔、反武勇伝というか、武勇伝の反対みたいな事をいっぱいやってたんですよ。オレ。暴れて泣きながら帰るとか(笑)。みんながなだめてくれるんだけどスネて帰っちゃったりとか。そういう事をさんざんやってたから。

Y:先ほども紹介しました「巡礼通信」内での茂木さんの記事に、「この作品は巡礼のとどめです」っていう言葉がありましたが、それには朝倉さんも同感でしょうか。

A:そうですね・・”とどめ感”ってのは自分でもあるんだけど、自分の中では”「花」の巡礼ね”ってとか、”「つぎねぷ」いいね”っていう評価をしてくれるエリアの人達だけの音楽に巡礼をしたくないっていうのがあって。例えば、エレクトロが好きな人、タブラが好きな人、それらをひっくるめて巡礼が好きな人、そういう人達に支えられて、おかげさまでほどほどのセールス(知名度)はあったんだけど、それじゃ納得できない自分がすごくあるから。だからって小泉さんっていうネームバリューがある人を起用したって事とは違うんだけど。あ、酔っぱらって言った事思い出した。「オレね、最初”樹木希林”ってのもありかなって思ったんだよねぇ」って言ったら大笑いしてたけどね。小泉さん。オレは同列だって事を言いたかったんだけどね。

M:ONE AND ONLYって事ではどちらとも圧倒的な存在ですもんね。

A:かっこいいじゃん樹木希林って。そのぐらいなんだって事をオレは言いたかったんだと思うんだけどね。でもね、制作中も小泉さんとすっごく連絡を取り合ってる訳じゃないんだ。で、出来上がりを送って、「面白かった」「良かった」っていう電話が小泉さんからあって。それ以外はそんなに連絡をとってないんだけど、すっごいうれしかったよね。小泉さんから電話をかけてきてくれた事自体がね。

M:オレが一つ補足すると、オレがここで“とどめ”って書いたのは、巡礼へ対してのプレッシャーでもあるんですよ。巡礼は「タブラマグマボンゴ」でスタートしたんだけど、まず「花」っていう爆発があって、「つぎねぷ」へ向かった。じゃあ次の曲はどうすんのかな?って思った時に、今度メロディいきましょうってなった。じゃあ、この次は?ってなりますよね。

Y:そうですね。この先どうなるんだろう?っていうのは、巡礼を聞いている人はみんな思いますよね。

M:思ってるね。その想像力が高じちゃって巡礼のファンにとっては「花」ってもはや歌えるものになってるっていう異常事態にまでなってる。

A:もっと歌えるものを創りたかったんだよね。口ずさめるというか。

M:やっぱ「花」が”WIRE誌”であれぐらい評価されたり、ローラン・ガルニエのMIX CDで使われたりしただけあって、海外のテクノシーンとか音響の中ではちょっと巡礼の影響ってもう顕れはじめてる。言葉をエディットしていくっていう手法とかでね。で、オレはそれがまた悔しい訳よ。「本家よりも売れんじゃねーぞー!泥棒猫が!頼むから(笑)」、みたいな気持ちがあるからさ。そしたら本家、巡礼は「背中」でまた一歩上へ行った。気の早いオレは、じゃあ次にどこに行くんだろう?もしくは、行って下さいっていう勝手な思いが、“とどめ”って言いきっちゃった事につながるんです。だからこれは巡礼へのメッセージでもあるんですよね。

A:今までやってた巡礼のLIVEでもそうだけど、ムーブメントみたいな中でもやっぱり浮いちゃうんですよ。つるんだりするアーティストもいますけど、その中でも浮いてる巡礼っていうのがあって。で、そういう人達に、ポップっていうかポップなものは悪いことでは無いんだよっていう。悪いことというか ポップなものってかっこいいじゃん、ウタモノってかっこいいっていうね。それを小泉さんを介して出来たと思うんだけどね。巡礼汁をたっぷり残したままで。

M:そうそう。やっぱ小泉さんもそういうかっこいいってことに反応してると思うんですよ。だから今巡礼を好きな人たちって、オレ、相当分かってんなーって思うんですよ。この段階で反応してるやつはたいしたもんだと思う。

A:HP上のメールとか見ててもさ、”たまらず”とか”思わず〜”っていう言葉が出てきたりするんだよね。やっぱその人なりに揺さぶられるところがあったり、その人なりの琴線に触れたんだと思うんだけど。で、もっともっともっと色んな人に触れてほしいと思って、ツアーもやったりしてる訳だけど、そういうものとは別に、ここでもう一個大きなつかみを打ちたかった。

Y:ちょうどLIVEの話が出ましたが、もちろん今作もLIVEでやられると思いますが、LIVEの構想などはすでにあるんでしょうか?

A:うーん、今の時点ではまだわかんない。もうちょっとたたないと出てこないなぁ。レコーディングの時点ではLIVEの事とかは考えてないしね。あとから、じゃあどうしようかって感じ。そこがいわゆるバンド形態と違うところで。極端な事を言えばオレがいなくたって成り立っちゃったりすんだもん、LIVE。本当の事を言えば、オレはもうマスコット・ボーイでいいって思ってる(笑)。いればいいって。

M:一時期のマイルス・デイビスっぽい。ステージ上にいるだけ。でもマイルス・デイビスバンドっていう。

A:まあマイルス・デイビスまでいかなくても、お地蔵さんみたいに座ってて、曲が成り立って、曲が進んでLIVEが進んでいけば・・いや、手を抜くって事じゃなくね。自分の音楽が、自分のステージが、自分で音を出さなくても進んで行ったっていいじゃん。って思ってる。自分の、自分達の音楽だから。

M:まあ、朝倉さんはドラムを演奏してる時も叩きっぷりがすごくいい。だからそのプレイしている瞬間のだいご味っていうか、普通にかっこいいって思える感じを、巡礼の中でも見たいって思ったりもしますけどね。話は違うんだけど、前に朝倉さんとマイルス・デイビスってなんとも言えない共通点があるなって考えた事ってあるんですよ。トランペットの腕じゃないですよ。

A:トランペットの腕は5億分の1ぐらいですけどね(笑)。

M:マイルス・デイビスの音楽っていうのは、今でこそ普通に聴いてますけど、あの人が最初にやった瞬間っていうのはやっぱり異常だったと思うんですね。で、その発想の裏に、もの凄い他人とか音楽の現状に対する妬みを感じるんですよ。朝倉さんももの凄い妬みを持ってる。現状に対する恨みとかつらみとか。二人ともオレには凄い負のエネルギーから革命的なものを創り出す人に見えるんですよね。

A:嫌いじゃないんだけどね。今の音楽、すっごい好きなんだけど、やっぱり自分が創る時は絶対違うものをって思う。本能的に思うね。作為的にじゃなくて。それが巡礼を動かしてるんだと思うんで。だからオレは巡礼というものが、うまく動けばいいと思ってるだけで。LIVEでもそう。今日の、このLIVEがうまくいけばいいと思ってるだけで。よくあるプレイアビリティ、演奏能力、そういうところじゃなく、トータル的なところを考えて行きたいっていうか。

M:象徴的なLIVEを思い出しました。「花」の初演の時。華盛楼で。その時って、タブラのパートを全部湯沢君がやったんですよ。最初から最後まで。朝倉さんは最後に一回あのポーンってなるやつ(アルトサウンド)を叩いただけ。こりゃかっこいい!と思いましたね。「新曲やります」、「『花』っていいます」って言って、お客さんは、あ、ついに「花」が聴けるってすげー注目してるじゃないですか。で、あとは朝倉さんは座ってるだけ(笑)。表題曲の初お披露目の時に一発しか叩かないってかっこいいって思いましたよ。

A:理由は自分のやるところがまだ叩けなかったからやってもらったってだけなんだけど(笑)。U-Zhaanのおかげ(笑)。

M:(笑)それだけなんだけど、でも湯沢君も初めての「花」で緊張しててさ、足下に全部譜面ならべてさ。で、オレも来てる、みんな来てる、結構あの人も負けん気強いから、絶対外せないと思ってるし。まあそれはそれはいい演奏でしたよ。

A:そうだねー。彼のああいう時の勝負勘はすごいよね。

M:で、ものすごく緻密に後になって反省ますしね。大丈夫だよって感じなんだけど。

Y:今回のシングルに「背中」の他に収録される曲はありますか?

A:もう一曲「Parlor」って曲と、「背中」のインスト。なぜインストを入れたかっていうと、これは歌える巡礼にしたかったから。歌えなくてもいいんだけど。口ずさめたらいいなって。普通にのれる曲がいいなって。脳とか気持ちばかりで聞く音楽ばかりが音楽じゃないなとも思うし。FOEとかブッチャーズとか見てると全然そう思うし。

Y:では「Parlor」はどんな曲ですか?

A:「Parlor」はね、パチンコみたいな曲。

M:フルーツパーラーのパーラーじゃないんですよね。

A:パチンコ屋のパーラー。「背中」との対極の巡礼ってことで。

M:まあ、どあたまで、音が入ってるからわかりますけど(笑)。

A:娯楽としてさ、あんなにハイテクなものってないじゃん。そんなにないよね。コンピューター制御されてるし、すごいデジタルで。(パチンコ屋の音を)聞いてるとなんかリズムっぽいものを感じてしまうんだなぁ。それとタブラとかメロディとかがオレの頭の中でぐちゃぐちゃになってああいうものが出来たんだんだけど。巡礼ホーンズもいつにもましてヘボヘボ度が出てて良かったと思いますよ。

Y:茂木さんに質問なんですが、かねてから「売れたい!」と公言してる朝倉さんですけども、その手応えは今回いかがでしょう?

M:今回、万人に気に入ってもらいたいってわけじゃなく、万人の耳元までいける形を作ってほしいと思っていたのね。触れる事が出来る機会を増やしたいっていうのが今回の目標だったわけ。って目標を考えると、それは出来る曲が完成したと思う。海外の人達にも、こういうものが日本で作られてるんですけど、どお?っていう気持ちはあるよね。「是非聴いてみてください!」っていう気持ちじゃなくて。「こんなもんがあるけど、どーする?」みたいな。自信あるよ。

Y:今回のジャケットには絵が使われているんですけど、この絵は?

A:これはオレが描いたものではなくて、しかもこの曲の為に描いたものでもなくて。なんか、実家にちょっと帰った時に、うちの母親は別に絵描きではなくて美容師なんだけど、絵を趣味でちょっとやってるらしく、油絵みたいなのをね。実家に帰ったらまさしく曲とぴったり合うような絵があって。

Y:「背中」の製作中に実家に行ったんですね。

A:うん。実家に戻ったらこの絵があった。で、自分の母親の絵を使うのも何かなぁ、っても思ったんだけど、そういう照れくささを乗り越えてしまうぐらい、なんかはまったので。実家から送ってもらって。

M:母の力恐るべしですよね。自分の息子が「背中」って曲作ってる時に自分は「背中」の絵を描いてる。親子の愛のシンクロニシティ(笑)。

A:いつ描いたんだかもわからないんだけどね。あえてそれも聞かない。多分最近描いた絵ではないと思うんだけど。まあ、こんな絵があるんだったら使わない手は無いなと思ったんだな。よーく見るとすごく変わった絵なんだよ。どこに座ってんの?っていう、そのエラー感もこの曲にあってると思ったし。親から受け継いだものなのかなぁ、オレのエラー感つーのはって思っちゃうぐらい(笑)。なんだこの絵は?って。

M:オレも異常だと思いますよ。

A:異常だよね。

M:でも、「背中」って曲に対して、あの母親の絵っていうのはすごいと思いました。

A:曲の佇まいとこの絵の佇まいは非常に近いものがある。発注したりっていう事よりも、こういう偶然性の方がよっぽどすごい事が起きるっていう事だね。偶然って恐ろしいものでねぇ。だから母親には、この絵の事に関してはほんと何も聞いてない。何で背中の絵なんだとか、これは誰なんだとか、いつ描いたんだとか、一切聞かないし、聞こうとも思わない。多分これから先も聞こうとは思ってないし。ただこの絵が存在するってだけで、オレにはもう・・それでいい。

Y:では最後に、もう聞いた人、まだ聞いてない人含め、このインタビューを読んでいる方に何かメッセージなどありますか。

A:結局、フィーチャリングなんかやっちゃったの、巡礼?っていう人もいると思うんだ。うん。そういう言葉尻というか、フィーチャリング形態をとっただけで、じゃあ巡礼の音楽どうなった?悪くなりました?だめですか?って言いたいよね。本当に自信作だって・・まあ創ったばっかだからそういうけど。まあ相当そんなに曲が連発して創れるようなタイプのユニットでもないので、本当に茂木君も言うように”キモ”だろうね。”キモ”だといってこの先どうなるかはもう、僕の手からは離れた事だから何ともいえないけど。みんなの反応を待つっていうか。あの、一番気をつけたのは、「花」を聴けないっていう女の人が多かったっていう、オレにとってはすごくショッキングな出来事というか現象があったので。

M:聴けないっていうのは?

A:恐くて聴けないって。例えばタワーレコードの知り合いの店員にも言われたんだけど、視聴機で聴いてる女の子が「花」を聴いた時に、異常に早くヘッドホンを外すんだって。床にブン投げるぐらいに(笑)。恐いんだろうね。この先どうなるかわかんないって。そうかと思うと、じーっと最後まで聴いちゃって、泣きそうになってる人もいる。そういう現象があって。だから「つぎねぷ」は比重を軽くしてみたり
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